難治性てんかんにおけるカンナビノイド(大麻抽出成分)由来医薬品の治験に向けた
課題把握および今後の方策に向けた研究

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聖マリアンナ医科大学
てんかんセンター

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研究内容

指定難病であるレノックス・ガストー症候群やドラベ症候群は、小児期から成人期まで様々なてんかん発作が断続的に出現し、重度知的障害を併発するが、有効な治療法がありません。
これらの治療を目的としたカンナビノイド(大麻抽出成分)由来医薬品は、米国をはじめとした諸外国で治療薬として使用開始され、一定の臨床効果をあげています。
「こんな薬剤があったら私の娘も幼児期を無難に乗り越えることができ、今ほど障害が残らなかった。なんとか導入して欲しい」と患者家族からの声もあり、国内においても期待が高まっております。
平成31年・令和2年には国会において厚生労働省よりカンナビノイド由来医薬品の使用については、大麻取締法および医薬品医療機器法では輸入も使用もできない一方で、治験に関しては可能であり、厚生労働省より新薬の治験の適切な実施に向けた研究等の方策を検討するとの見解が示されております。
しかし、厳格な管理を必要とされる薬剤の保管体制や患者供給体制は確立されておらず、薬物乱用や依存の可能性の問題も整理されておりません。
諸外国におけるカンナビノイド由来製剤の供給能力に関する情報はなく、参入表明する国内製薬会社もない状態です。
このように、カンナビノイド由来製剤治験を無事故で開始するに存在するハードルはあまりにも高く、これまでに本邦においてカンナビノイド由来製剤に対する治験は実施された例はありません。
本研究は、諸外国でカンナビノイド由来製剤の適応となっている難治性てんかん患者、及び成人難治性疾患(難治性慢性疼痛・統合失調症・結節性硬化症等)患者の現在の症状の程度、治療法、QOL、重症度、知的障害の程度等を把握するとともに、カンナビノイド由来製剤による治験およびカンナビノイド由来製剤を医薬品として使用することに対する抵抗感について調査を行います。
また、カンナビノイド由来製剤を用いた治験を行うにあたっては、薬剤管理・病院の体制・大麻施用者免許・使用者およびその周辺の者の薬物乱用の可能性等様々な課題があるため、その抽出及び整理を行い、治験薬候補の選出、治験薬の管理・投与体制、治験プロトコール等の例示を行い、今後のカンナビノイド由来製剤の治験に向けた基盤を醸成します。
なお、大麻取締法および医薬品医療機器法の現行法下では、カンナビノイド由来製剤は治験を行うことはできますが、医薬品として患者に投与することはできません。
将来、研究が進んだ暁には当該法律の改正を目指す必要があり、その際の科学的な根拠を創出します。
これにより、カンナビノイド由来製剤による治療を集学的治療に追加することにより難治性てんかんおよび難治性疾患の診療の質の向上を図ることが目的です。

本研究により、難治性てんかんの現状が患者数や患者ニーズ等を含めて明らかとなり、将来実施されるであろう難治性てんかんに対するカンナビノイド由来製剤を用いた治験を行うための課題が整理され、これにより、新薬の治験のあり方等の検討資料となり、カンナビノイド由来製剤を用いた治験を行うための医療機関や製薬企業の対応策を例示されることが期待されます。
また、諸外国でカンナビノイド由来製剤が適応となっている成人難治性疾患(疼痛・神経疾患・精神疾患)に対する適応も検討され、今後の治験を推進するにあたっての基礎資料となることでしょう。
さらに、今後これらの研究結果により、カンナビノイド由来製剤が本邦において、難治性てんかんやその他難治性疾患に対して薬剤として患者に処方されるためには、大麻取締法や医薬品医療機器法の改正が必要となるため、その根拠に資するものとなります。
最終的には難治性てんかんを始めその他難治性疾患に対するカンナビノイド由来製剤が医薬品として処方できることとなり、より質の高い医療が提供され、それらの疾病に苦しむ患者・家族が救われることが期待されます。

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